インストラクショナルデザインでは、初めにプレースメントテストを行って必要条件を満たした学習者がクラスに参加できるようにするとのことですが、実際の現場はクラス内の格差がひどい場合も多いです。
勤務した高校のあるクラスの状況を調べたところ、40人のうちひらがな・カタカナがすべて使えるのが2割程度、ひらがながだいたい使えてカタカナがわからないのが6割程度、ひらがなもわからないのが2割程度といった割合でした。ローマ字もわからない学生も3-4人ほどいました。
そんなクラス内での学力差がある中どうしたらいいのか悩んだ中の実践例を書いておきます。
教科書・クラスの紹介
「こはるといっしょににほんごわぁ~い 2巻」を使った会話の授業です。
(教科書は、こちらで試し読みができます:https://www.flipsnack.com/59FC6CBA9F7/2-f7n0glfm.html?pn=7)
各課の構成は、おおよそ「モデル会話→語彙導入→ペア・グループでの会話練習やQ&Aのワーク→その日のキーセンテンスを単語代入して教科書に書き込む」です。
5年生(高校2年生)の週6時間学習するクラスで、週2時間がこのテキストを使用した会話のクラスでした。
1学期の途中から入り、当初は教科書の内容をそのまま行っていましたが、「友達5人に好きな食べ物を聞いて答えを記入しよう」といった課題の時間をとっても、日本語を使って会話をするのはごく一部で、大多数の学生はタイ語を使ったり、友達の教科書の書き込みを待って写すという状況でした。
写す場合、ひらがなも読めない学生は、筆者というより絵を模写するような形を追いかけるようなコピペになってしまっていました。
2学期目の実践内容:
2学期目はペア・グループワークの時間は無くし、ペア会話のビデオ提出の課題を出し、ビデオの作業時間に置き換えました。
授業の流れは「その日のトピックについてタイ語で軽く話す→モデル会話を一緒に意味を確認して練習→モデル会話に代入して使える語彙の確認と発音練習→他に知りたい語彙があれば質問してもらう→各自練習してビデオ撮影/教師への個別質問の時間」
ねらいは主に3つです:
1.ビデオを撮って提出すると課題点がもらえる/友達にも見られるため、ちゃんとしたビデオを撮りたいと思う→撮影前にたくさん練習をする=発話機会の増加
2.授業中に会話練習・ビデオ撮影の作業時間を入れることで教師の空き時間ができ、教室内を巡回して困っている学生をケアできる
3.文字が苦手な学生でも、友達のノートの丸写しなどではなく、自分の力で日本語を話してなんとか課題を出せる→自己肯定感の醸成、成功体験の積み上げ
背景にある考え方は2つ。
簡単に言うと、「できる人は放っておいても自律学習できるから縛りすぎずに任せる」「アウトプットでは、できる人は工夫したハイレベルな産出・不得意な人は最低必要レベルの産出と、実力なりに取り組むことができる」です。
2つとも自前ではなく借り物です(最下部にブログリンクあります)。
オンライン化
途中、2か月ほどオンライン授業の期間がありました。その間は、教科書の内容をもとにモノローグのスクリプトを作って一人で録音できるような形にしたり、質問と回答と一人二役するビデオにしてもらいました。後者はあまりよくありませんね。
携帯を駆使すればビデオ通話等でペア会話の録画も可能ですが、デジタル機器のハードルが上がって学生のビデオ提出率が下がるのを恐れ、上記のような形をとりました。
結果
よかった点
1.できる学生は、授業中に撮影まで終わらせて悠々としていたり、ほかの授業の宿題に取り組んだりしていました。すでに理解している説明を聞いたりまったりする時間が減りました。
2.教師が巡回するため、後ろの方に座っている学生も質問がしやすくなりました。また、教師は困っていそうな学生に個別対応する時間を取れるようになりました。
3. 後ろの方に座っていてあまり学習意欲が無いように思われた学生の中で、やる気を出してGrade4(最高レベル)を取った学生が出ました。
限界の点
ビデオをあまり提出しない学生がいて、成績は2極化してしまいました。
中間層を引き上げることはできたようですが、学習意欲が低い層を巻き込むことは少ししか成功しませんでした。特にオンライン授業の期間のビデオ提出率が低くなってしまいました。
いかがだったでしょうか。
今回の事例があまり参考にならなくても、「トップを解放せよ」と「格差があるクラスでのアウトプット中心の授業」という2点は参考になると思うので、下記元ネタリンクを是非ご覧ください。
むらログ「トップを解放せよ」
http://mongolia.seesaa.net/article/398383943.html
さくまログ アウトプットを中心に据えた授業